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教員のオススメ本

教員のオススメ本をご紹介します。
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第12回 大学に入ったら読みたい本 (2018.3~2018.5)

法学部 横山千晶先生のオススメ本

自己紹介 2017年の10月から日吉メディアセンターのセンター長を務めています。法学部では英語とイギリス地域文化論、そして身体知・映像クラスを教えています。毎週火曜日の夕方には中区の石川町で、小さな居場所「カドベヤで過ごす火曜日」を開催して、地元の人々と小さな、頑張らないコミュニティづくりの実験を行っています。
ご専門は? 19世紀イギリスの文学と文化が専門です。最近では19世紀の半ばから始まった労働者の教育について調べてます。それ以外にも19世紀のイギリスではじまったコミュニティづくりも研究テーマです。
どんな学生でしたか? 結構表面的にはまじめだったかな。基本的に授業は欠席せずに出ていました。どんな授業でも学び取ることはあると信じて出ていましたが、やっぱり本当に退屈な授業もたっくさんありました(笑)。そんな時は小説や映画の部分やワンシーンを創作したりして過ごしていました。実際に今自分が授業をやっていると、やはり教員が楽しいと思って教えているとその「熱さ」は伝わるものだな、と感じています。なので、「楽しいと思うこと」を「どうして楽しいのか」が伝わるような授業づくりに努めています。そうしないと自分も楽しくないから。あとは図書館は本当に好きでした。いまの三田の旧図書館が私たちにとっての「図書館」でした。勉強に励むというより、あの建物の中にいることが幸せでした。
休日の過ごし方 たまった洗濯をしたり、晴れていたら必ず布団を干します。スーパーに行ってゆっくり最近の商品を見るのも好き。とりあえず、午前中は何でもないことをとことん味わって過ごすのが私の休日の過ごし方です。
塾生に一言 大学は勉強するだけのところじゃない。本当にいろいろな催し物が毎日たくさん開催されています。そのすべてに首を突っ込んでいたらいくつ体が合っても足りないぐらいだけれど、せっかくだから大学が提供するものをとことん楽しんでみたらどうでしょう。図書館もただ本を借りて読むだけの場所じゃありません。最近はビブリオバトルなど、たくさんの企画が目白押しです。また、図書館でこんな企画をやってみたい、というアイディアがある方はぜひとも教えてください。

おすすめ本リスト

Yann Martel 著 Life of Pi  (翻訳 ヤン・マーテル著『パイの物語』)

カナダ人のヤン・マーテルによる作品。2002年にはイギリスのブッカー賞を受賞しました。初めて読んだときは、その文章の美しさと、様々な実験的な創作の試みに息をのむ思いをしたものです。インド人の少年が、家族と家族が経営していた動物園の動物たちと一緒に日本の船舶会社の所有する船でカナダに移住する際に遭難し、唯一生き残ったベンガル虎と一つ船に乗って漂流するという話。言ってみればただの冒険談に聞こえるかもしれないが、話はそんなに簡単ではありません。パイの語る話を通じてマーテルが描きたかったのは、「宗教」とは、人間の心の底に潜む「悪」とは、という永遠のテーマ。そして何が真実で何が物語なのか、というこれも永遠のテーマ。パイの語る言葉が真実なのかどうか、ということはどうでもいいこと。歴史とは、結局生き残った人が語ることで伝えられていくものです。そして物語とはそのような歴史を象徴を使って語っていくものでもある。ひとりの少年の物語はそんな大きなテーマを私たちに伝えてくれます。そして私が最も感動したのは、この作品の最後です。これ以上は私の口からは語りません。ぜひとも手に取って読んでみてください。

請求記号 B0@933@Ma17@1
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請求記号(翻訳) L@933@Ma11@1-1~2
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Kazuo Ishiguro 著 Never Let Me Go (翻訳 カズオ・イシグロ 著 『わたしを離さないで』)

2017年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの作品。映画化のみならず日本でも演劇になったりテレビドラマになったりしたので、それらを見てから読んだ人も多いかもしれません。作品が出た当時、イシグロはこの作品をSFとして読んでほしくはないと言っていました。確かに彼の作品の中に流れるひとつのテーマは、人がどのようなものであれ、置かれた環境の下で、精いっぱい気高く生きようとするその品格(ディグニティ)です。臓器提供のためにこの世に生まれてきたクローンたちにとってもそれは同じで、彼・彼女たちは自分の宿命を静かに受け入れていきます。その姿は痛ましくもあり、また気高くもあるのだけれど、この物語は決して客観的に読める作品ではない。創造性(クリエイティビティ)偏重の社会、聞こえのよい言葉の中に隠されていく・あるいは隠さなくてはならない真実(実際にこの物語の中でクローンという言葉は一度しか出てこないし、臓器提供者の死は「complete(完成・完了)」という言葉で表現されます)、心からの共感を伴わない底の浅い福祉政策や慈善活動など、現代社会への批判が満載です。しかし、このある意味救いのない世界の中で「語ること」は大きな意味を持ちます。イシグロ作品のもうひとつのテーマは「記憶」です。自らの死を待つ語り手のキャシーにとって、自分と仲間たちの今までを振り返り、語ること、その記憶をとどめておくことは、それだけで自分たちが生きてきた大きな証となるのです。人間は創造性というものを押し付けられなくても、歌い、踊り、そして言葉を紡ぐものなのです。たとえ明日、死ぬのだと言われても。そんな人間という存在を、言葉による表現で力強く訴える作品です。文学というジャンルの力をも読む人に伝えてくれることでしょう。

請求記号 B0@933@Is2@8B 他
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請求記号(翻訳) L@933@Is1@5
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Issac Asimov著 I, Robot (翻訳 アイザック・アシモフ著 『われはロボット』)

ロボット三原則で有名になった未来小説。私たちにとっての現実がいかにフィクションとしての小説に先取りされているのか、あるいはフィクションがあるから、それに追いつこうと科学の世界が動くのか。そのよい例を示してくれる短編集です。AIが自立学習を始めた今、原子力と同じように、私たちは自分たちの生み出したものを制御できなくなっています。同時に生みの親である人間の作り出した矛盾だらけの「原則」に一人歩き始めたAIはどう対処していくのでしょうか。私たちはこの問題にAIと一緒になって取り組んでいくことになるのでしょう。

請求記号 受入中
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楳図かずお 著 『わたしは真悟』

3に絡んでもうひとつ。こちらは漫画です。1982年から連載が始まりましたが、そこで展開される世界の奥深さと先見性には本当に驚かされる。ヒューマノイドではなく、産業ロボットの「真悟」に意識が芽生えるという話は、もちろんアイザック・アシモフの『われはロボット(I, Robot)』を意識しているものの、連載が進んでいく中、物語は意識、存在、神の問題など、哲学的な問題へとテーマを多岐に広げていきます。そしてこの作品もよい例ですが、楳図 かずおの作品のテーマのひとつは「子供」。主人公の子供たちは、偏見を持たずにこの大きな世界と対峙していきます。ただその姿に、私たちはこのカオスと化した世界に放りだされた自分たちの姿を重ねずにはいられない。今だからこそでしょうか。何度読んでも新たな感動が沸き起こります。2016年にはフランスの振付家、フィリップ・ドゥクフレの演出でミュージカルにもなりました。

請求記号 B@726.1@Um1@3-1~6
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経済学部 戸瀬信之先生のオススメ本

自己紹介 経済学部で数学を教えています。実は、学部生、修士の6年間日吉に住んでいました。去年取り壊された日吉台学生ハイツから駒場と本郷に通っていましたが、周りは慶應の学生ばかりでした。修士1年の春にマクドナルドが日吉にできましたが、週末の食事がすごく改善されたのを覚えています。それ以外に文具店と とんかつの三田が当時から同じ場所に店を構えていましたが、文具店はつい最近移転しました。
ご専門は? 数学、主に代数解析的な手法によって偏微分方程式を研究しています。
どんな学生でしたか? 中学生、高校生の時代はよく岩波新書を読んでいました。学部時代は物理学研究会という数学と物理を一緒に勉強するサークルに入っていました。学生時代のアルバイトはもっぱら数学、物理の家庭教師で、東大数学科の学生ということで大変おいしい仕事が多かったです。
休日の過ごし方 最近は休日も大学にきて、本を読んだり、次の週の講義の準備をしたりしています。天候と体調がいいときは、たまに登山にでかけます。好きなのは丹沢の山です。時間があるときはクラシックのCD、特にJ.S. Bach などを聴いています(実はCDを収集するのが趣味と言ってもいいくらいです)。
塾生に一言 なにごとも継続が大事です。一夜漬けは一夜漬けでしかなく、短時間に身につけたものはあっという間に抜け落ちます。数学はその最たるものといえましょう。

おすすめ本リスト

小平邦彦 著 『解析入門I, II』(岩波書店、2003)

純粋数学の研究者を目指す場合はもちろんですが、高度な数学を用いる物理学などの研究者を目指す場合は、実数は何かということから始まって論理的に精緻な微分積分を学ぶ必要があります。私が大学生になった1979年ころまでは高木貞治先生の「解析概論」が定本で、全国の理工系の大学生が読んでいました。小平邦彦先生の「解析入門」はちょうどその頃に出版されました。代数、幾何、解析の3分野を縦横無尽に研究してフィールズ賞を受賞した小平先生が書かれた解析の本には至る所に独自な発想に基づく展開が見いだされます。「解析入門」は岩波基礎数学という講座の一部として出版されたのですが、私が高校生のときに大いに背伸びをして講座の購入を父にお願いした思い出があります。高校生のときに辛うじて読めたのがこの「解析入門」でしたが、大学に入ってからも何度もノートをとりながら読み返しました。この本を理解すると数学者になるために大学院に進学する準備がかなり済んでしまうのではないかと今でも思います。

請求記号 B@413@Ko46@1-1~2 他
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栗原将人 著 『ガウスの数論世界をゆく: 正多角形の作図から相互法則・数論幾何へ』

著者の栗原将人さんは本塾の理工学部教授で、数論に幾何的な手法を持ち込んだ数論幾何の世界的な研究者です。大学に入って学ぶ数学といえば微分積分学とその応用にあたる微分方程式、あるいは線型代数、確率論とその応用にあたる統計学くらいだと思います。本当のことをいうと、数学者としてはあまり面白みを感じない内容ばかりです(とはいうものの、微分積分学と線型代数を学ぶことは数学において相撲の四股にあたる重要な基礎力養成にあたります)。自分で数学を学ぶとして、新入生レベルではあまり適当な分野はないのですが、いくつかの例外の一つに初等整数論があります。私が大学生の頃は高木貞治先生の「初等整数論講義」(共立書店)の最初の半分くらいをみんなかじったりしていました。本題に入ると、この栗原さんの本は大学の数学を予備知識とせずに、ガウスが到達した整数論の世界に一歩一歩、数学を構築しながら導いてくれます。しかも構築する数学は、栗原さんが専門の数論幾何的な発想をもとにしています。最後は、フェルマーの大定理を導いたワイルズによる志村・谷山・ヴェイユ予想の解決まで話を進めて終わっています。それもまっすぐに、いくつもの山を登り降りしながら。2016年度にこの本の草稿を用いて日吉の1年生のセミナーをしたようですが、その学生たちはすごく上質の体験をしたのではないかと思います。

請求記号 B@412@Ku5@1 他
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山本義隆 著 『重力と力学的世界:古典としての古典力学』

著者の山本義隆先生は予備校生時代に物理を教わった恩師にあたります。地球が太陽を焦点の一つとする楕円軌道上を一定の面積速度で運動すると1609年にケプラーが発表しました(ケプラーの第1法則、第2法則)。このように書くと物理学の浸透した世界観の中ではなんでもないように思えるかもしれませんが、当時の世界観にあっては衝撃的な事実でした。数学を学んだ現代人にとって円は楕円の特殊なものですが、当時は完全な運動は円からなるということがアプリオリに考えられ、地球を中心に太陽などの天体が等速で円軌道を描くと考えられていました。実際は、火星などの惑星は複雑な軌道を描くことが地球から観測できるので、これを円運動の組み合わせで理解しようともしていたくらいです。コペルニクス、ガリレオ、ケプラーと地動説を唱えた科学者の中でケプラーが一線を画すのは、楕円軌道と等面積速度の2つの法則を大量のデータから導き、法則を数学的に厳密に表現した点にあります。さらには、慣性と重力という力学的な世界観を導いた点にあります。このケプラーの話から、万有引力を導入したニュートンや解析力学を完成させたラグランジュまで重力と力学的な世界観の完成の流れを時代の背景とともに描いたのが本書です。ケプラーは師匠のチコ・プラーエが蓄積した惑星軌道の観測データからケプラーの法則を導いたのですが、円軌道からのずれが最も大きい火星の分析を師匠から担当させられました。もし他の惑星の担当だったらと思うと科学の歴史はどうなったのでしょうか。そのようなエピソードもいろいろ楽しめます。

請求記号 B@423@Ya2@1
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朝永振一郎 著 『量子力学I』

朝永振一郎はノーベル物理学賞を日本で2番目に受賞した物理学者です。最初に受賞したのは湯川秀樹ですが、このあたりのことは若い世代にとってすでに歴史となっているのかもしれません。この本は前期量子論と言って、量子力学がシュレディンガーやハイゼンベルグによって確立される以前に発見された現象を物理学的に辿っている本です。前期量子論は高校の教科書にも出てきますが、かなり薄いものになっています。大学に入学してから学んだ量子力学というと、シュレディンガー方程式の解の確率論的な解釈を学んだ後にひたすら特殊関数を使って方程式を解くということに終始していました。水素原子をはじめとして現象を理解できたという意味では価値があったと思いますが、それまでの古典物理学の世界観から大きく跳躍した量子力学的な世界観を人類がどのように手にしたかを学ぶのは重要だと思います。この本との出会いは大学1年のときで、その後物理学科に進学して物理学者になった友人と二人で輪講をして読んだ記憶があります。私は数学科に進学して数学者になったのですが、数学研究に忙しくてあまり物理学を勉強する時間がとれなかったのを後悔しています(実は数学の研究分野からするともっと物理を勉強してよかった面もあります)。もう一度物理学を勉強するとして、おそらくはこの本かファイマン物理学から始める気がします。この本はかなり本格的なものでノートをとりながら読む本ですが、そこまではという場合は「物理学とは何だろうか(上)、(下)」(朝永振一郎、岩波新書)がおすすめです。

請求記号 B@421@To9@1-1 他
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商学部 上村佳孝先生のオススメ本

自己紹介 小さいころから昆虫や魚をつかまえるのが好きでした。そのまま大人になりました。
ご専門は? 進化生物学です。交尾器の形はなぜ多様化するのか、なぜ速く進化するのか、主に昆虫を対象に研究しています。詳しくは拙著『昆虫の交尾は、味わい深い…。』(岩波科学ライブラリー)をご覧ください。
どんな学生でしたか? 野山を徘徊していました。早く自分で研究をしてみたくて、大学2年生の時から、動物生態学の研究室に出入りしていました。サークルには入らず、バイトもほとんどしませんでした。
休日の過ごし方 (周りの皆さんに迷惑をかけながら)平日と休日、家と職場とフィールド、あまりメリハリをつけずに、常にダラダラと全力を出さずに研究をしている感じです。(「全力で頑張る」なんてセリフを簡単に言う人はあまり信用していません。)
塾生に一言 遺伝子の力はおそろしく、ヒトそれぞれ、努力ではどうしようもならない「得意な事と不得手な事」があると感じています。「好きな事を仕事にできるよう」、就職して忙しくなる前に、本当に自分の得意なことを見つけて欲しいです。

おすすめ本リスト

Tom Stafford, Matt Webb著『Mind hacks : 実験で知る脳と心のシステム』(オライリー・ジャパン、2005) 

自分の体を使った実験で、ヒトの脳と心の不思議を探ります。自分のことってこんなに知らなかったんだ!という驚きがありました。僕の生物学の授業で使っているネタもあるので、ホントは内緒にしておきたい本です。

請求記号 B@491@St1@1 他
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五百部裕, 小田亮 編 『心と行動の進化を探る : 人間行動進化学入門』

ヒトはなぜ助け合うのか、なぜ恋愛するのか、なぜ個人差があるのか。誰もが気になるからこそ諸説乱立の話題の数々について、最新の知見がバランス良く紹介されています。ヒトはどのように進化してきた、どのような生き物なのか、関心のある方にお薦めします。

請求記号 B@140@Ih1@1
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水木しげる 著 『ねぼけ人生』

漫画家としての才能はもちろんだけど、水木しげる氏の運の強さがすごいです。「こんな風に運の良い人になりたいなあ」と、素直に思います。

請求記号 L@726@Mi3@1
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◆これまでのオススメ本◆

第11回 大学に入ったら読みたい本 (2017.3~5)

第10回 大学に入ったら読みたい本 (2016.3~5)

第9回 大学に入ったら読みたい本 (2015.3~5)

第8回 大学に入ったら読みたい本 (2012.7~10)

第7回 大学に入ったら読みたい本 (2011.7~10)

第6回 大学に入ったら読みたい本(2011.4~5)

第5回 大学に入ったら読みたい本(2010.7~10)

第4回 大学に入ったら読みたい本(2010.4~5)

第3回 大学に入ったら読みたい本(2009.7~10)

第2回 大学に入ったら読みたい本(2009.4~6)

第1回 大学に入ったら読みたい本(2008.12~2009.3)

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